2023-01-01から1年間の記事一覧

短歌日記52

* 救いなど求むる心勝るとき一羽の小鳥撃ち落としたり なだらかな地平の上を泳ぐ雲 われもいつか飛ばん ひとの死のもっとも暗い場所を掘る わが一生を忘れるために 森深くありたりひとり岩に坐すいずれ迎える臨終に寄せ 過去よりも信ずるものがなにもなく回…

短歌日記51

* ひとびとが河の姿で流れゆく未明の街の御伽噺よ たが母も腐れゆくなり鉄条網わが指刺さぬ一瞬のこと 世の光りわれを照らせと祈るのみ遙かな野火に癒されながら *

短歌日記51

* 蝶番はじけて夜が深くなる熾火の悪魔が笑う せめてものはなむけなればよしとする現代舞踏のなかの椅子たち いくつかの断章ひろう言葉とは自我を分断する鏡 挫かれて失う歌よ少年の日をいまおもう苦い水かな 存在も暮れてひとつになりにける鳥影過ぎるとき…

短歌日記50

* たそがれのもっとも明るい場所にゐて幼年時代の悪夢をおもう 星屑やわれを戒めこの街の流れのなかで永遠にあれ 青果店おそらく檸檬の爆弾を流通せんと企んでゐる ひとがみなわれを忘れて歩みゆく一瞬のやさしい渚 神の戸を開け給え、うつしよに燃ゆるキャ…

短歌日記49

* 歌論への試み 単一的な「コンビニ短歌」からの脱却方法 文語から口語、さらに交接歌へ 歌の墓場→新聞歌壇? テーマの逸散 なぜ歌人たちはより高い世界を見ようとしないのか 日常を超えて ユーモアとは戯けにあらず たったひとりで歌うこと * 詠むことの…

短歌日記48

* 雲分かつ光りのなかを雲雀飛ぶ 心の澱を灌ぐごとくに たれぞやの手袋ひとつ落ちており温もりわずか眼にて感ずる 鶫のようなひとがいましてぼくの手に羽根をひとひら落とす日常 暗がりに一羽のからす降り立ちぬ嘴の一瞬光りたる午后 星ひとり酒場を歩く夜…

短歌日記47

* ひとりずつ彼方へ消える冬の陽のもっとも昏い草原の果て 汝らに道などあらじ素裸で荊のなかに閉じ込められん ひとたらしの術ばかり憶えて中年の自身を憾む 真夜中の鈴 みどりごのみどりいろなる産着には赤い葉っぱが降り注ぐままなり 痛苦すら物語なり 芽…

短歌日記45

* 夕月の朧気なるを見つむるにひとはみな煙になるべし わが腿の火傷の痕よいままさに発光せし夜半の厨 なつのべに帰るところもなきがまま寄る辺を探すわれのさみしさ ゲートにて凭るるわれよ黒人の肩にゆれたる水瓶を見る 意志のないふりをつづけて文鳥の一…

短歌日記44

倖せという字を棄てる野辺に真っ赤な花咲くとき 咎人のわれが触れよとするまたたきに鳥の一羽が去ってしまった ヘロインの売人・歌う数え唄・ヤク中だらけの朝の街角 河枯れる陽だまりありぬ牛またぐ子供のかずを数える真昼 なみだぐむ玉葱姫よかなしみは心…