短歌日記47


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 ひとりずつ彼方へ消える冬の陽のもっとも昏い草原の果て


 汝らに道などあらじ素裸で荊のなかに閉じ込められん


 ひとたらしの術ばかり憶えて中年の自身を憾む 真夜中の鈴


 みどりごのみどりいろなる産着には赤い葉っぱが降り注ぐままなり


 痛苦すら物語なり 芽吹きたる木の芽をひとつきみにあげよう


 昇る月 カクテルグラスに透かし見てわが晩年を予感したり


 ひと知れずキリンの首が長くなる現象学のなかの光景


 水鉄砲に実弾仕込む朝またぎきみの寝室めがけて進む


 無人駅過ぎる一瞬に自転車の少女が笑う


 星を刈る一群 街を過ぎるとき三回転の鉈をふるう