2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

短歌日記39

* ゆかしめよ時のはざまにそよぎつつ眠れぬ夜を戦う花と わがための夢にはあらじ秋口の河を流れる妬心の一語 男歌かぞえる指に陽が刺さるゆうぐれどきのあこがれのなか けだしひとはうつろいながらうろ叩くやがて来たりぬ夢の涯まで つかのまの休息ありて汗…

短歌日記38

* 刈りがたしおもいもありぬ秋来る颱風過ぎてすがしい原っぱ みずいろの兎が跳ねる 妬心とはまだ見ぬきみにたじろぐ時間 神さまがくれたクレヨンなどといいぼくを欺く女学生たち 波たゆるいつかの秋がぎらぎらと迫り来るなり男の内部 姿鏡あり浮かべてわれ…

短歌日記37

* 子羊のような贄欲す朝ならばわれを吊るせと叫ぶ兄たち 踏み切りに光りが滅ぶ列車来て遮られてしまうすべてが かつてまだ恋を知らないときにただもどりたいとはいえぬ残暑がつづく 会わずして十年経ちしいもうとの貌など忘るつかのまの夢 よるべなどなくて…

短歌日記36

* 水匂う両手のなかの海さえも漣打ってやがて涸れゆく まだきみを怒らせてゐるぼくだから夏鈴のひとつ土に葬る もはや兄ですら弟ですらないぼくが父母ない街ひとつを愛す 生きるかぎりに於いてもはや交わさぬ契りを棄てる いまはもうだめにしてくれ丸太積む…

短歌日記35

* 来るたびにきみを眩しむ秋の陽の干割れた壁をひとり匿う 祖母死せり灸の痕を撫でながらわが指のさみしさおもう わらべらの声掻き消され一瞬の夏休みすらいまはむなしく 駅舎にてまぎれて叫ぶ男ありわれと重なる九月来たりて 上映せり夏の黄昏まざまざと復…