2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧

すべては無意味/アラン・マッケル=作

すべては無意味/アラン・マッケル=作 初出『パーシー・アカデミー』誌 1963年 12月号 クウォーター・パークの酒場でめずらしく呑んでいた かれは室でしか呑まない男だった もう若くない顔で時折 笑うそぶりを見せる その口もとは 神経がやられたようにゆが…

たどる

祈りさえなくてさまよう言霊もあってかがやく青果店かな むさしののゆうぐれかすむわれさえもかげに過ぎない三叉路を絶つ Perfume展観る ふぞろいのツーピースを着る夢を見る やがてまだかがやく兆しすらなくて回送バスのランプが赫い きぬずれのようなこと…

dark was the light

まどうひとばかり駅にいる ホラー映画のポスターのように きみの手に救いが落ちる炎天のゆらぎ+αを待つゆうぐれて 兄の不在つづく 夢から醒めたようにだれもいない診察室 ゆるぎたつ樹も眠りたり真夜中の階段ひとつ飛ばす父おり きみのせいにすればいいかと…

訪問者たち

終わりのない芝居のようだ 春でさえパレットのただ一片の絵の具 河のようにテールランプがつづく夜 まるでわたしを悼む送り火 ガシャポンの玉を眺める はるかまだ幼いときの景色とともに ヒール靴きょうもはかない ベッドにて青春歌集を読めばいいかと 心理…

夢を読む

はらからもなくてみどりを愛でるのみ午後一輪の花が咲くまで そしてまた子供の声が遠ざかる西日の高さに町も沈みて それまでのきみの肉体とはちがうものに飼われて愛も終わりぬ メサイヤにあらずや偽書よありうべき歴史なんぞはいずくにもなし ぼくがまだき…

オータム・ブルーム

両手にはなにもなくてもいいのにな果実くすねるぼくのうしろよ しろがねの秋のおもいで抱きしめる孤独の温度いまだわからず 天唇の綻び見たり秋の夜の光りのなかで茗荷刻みつ ぬくぬくと毛布のなかでくり返すあの日の夜の約束忘る わたしならああいわない猫…

めぐって、めぐって、

めぐりつつどうしたものかわたしがいないそんな朝すら愛しくおもう 仮面劇 真昼の稽古眺めつつ役者のひとりわれは恋する ながゆめのさなかになにか落ちて来る ぼくの知らないくちびるなんか 去りながらことばを噤む いつかまた会えないことを労りながら かつ…

長い腕のなかのおとぎばなし

わが冬の細雪さえ遠ざかる二月の真午手のひらに落つ だれもないひざかりにただ忘れられ真っ赤な靴のヒールが黒い 夜露照らされて窓いっぱいに光りの粒ばかりある夜半すぎれば 大鳥の来る日来たらず一壜のインクぶちまけたような夜が訪れ 帽子という一語は比…