まちがい

   過去を走り去った自動車が、やがて現在へと至る道
 それを眺めながら、ぼくは冬を待つ
 ぼくはかつて寂しかったようにいまも寂しい
 こんなにもあふれそうなおもいのなかで、
 きみのいない街を始終徘徊してるのさ
 これまでの災禍、そして怒り
 なにもかもが一切、見えなくなるまでずっと
 たとえば火の論証がぼくの存在を照らしてくれるのなら文句はない
 たとえば水の弁証がぼくの善悪を論じ尽くしてくれるのなら満足だ
 でも実際、なにがぼくの存在を照らすというのか?
 なにがぼくの善悪を論じてくれるというのか?
 もしかしたら、とんでもないまちがいを犯したのかも知れない
 小さな売店でホットドッグを買い喰いしたとき、
 落とした小銭入れが女の子の足に当たって、
 地面をバウンドしたら、かの女は驚いて、
 コーヒーを零してしまった
 ぼくは謝りながらも、
 かの女の靴の、エナメル質のことばかり考えていた。