コピー用紙のうらに書かれたおれの調書が
夜に発光するさまを12インチのフィルムが捉える
ものがみな逆さにされた室で、
朱い内装のなかで男が、
朱いベッドのうえで泣いてる
こいつはだれなんだ?
やがて男の妻がやつをなだめる
「どうしてなにもかも朱いんだ」ってやつはいう
でも、それはやつの内奥の色でしかない
なにも逆さになどなってはない
欲しいままに切り取られた裸体をばら撒き、
キャベツ男の頭をぶち抜く
弾丸のうえを街がよぎる
38口径の夢の址で
コピー用紙のうらに書かれたおれの調書が
踊り狂う芒原に今年も鰊が豊作だ
そう聞かされたのは朝の4時
突然の電話、そして盗聴された会話
内容の断片が次々とメディアに横溢するのを
黙って終夜営業のダイナーのテレビ画面から、
秘密の電波で聴いていた
かつて愛した女が知らない男に抱かれている
アパートの2階にはずっと闇が光っている
「どうしてなにもかも朱いんだ」ってやつはいう
でも、それはやつの内奥の色でしかない
おれは支払いを済ましてでた
女も建物の戸口からでた
すべては9年まえのまぼろし
われわれは──という辞を信じないおれは
たったひとりで17系統のバスを待ちながらも、
来年、40で死ぬことばかりを考えている。