ムンクの星月夜


 さみしさがどうにもならないとき、口のなかで爆発する薄荷飴を数えて、
 ひとつの動作から、もうひとつの動作へと移ろう、おれは孤立者
 いままであったことのぜんぶ、経験のぜんぶを蔑(みな)すだけで、
 たった1日から1週間までが消滅する、おれは孤立者
 いままであった裏切り、じぶんでじぶんを
 追放してしまったことを悔やみつづけるだけのときがつづく
 そして恐怖ともにのみ、なにかを信じようとして、
 それが見つからないことに苛立つゆうぐれ
 ぜんぶが無意味なのかも知れない
 過去をつれあいにして、
 場面から場面を拡大しつづけるおれ
 深夜の摩耶埠頭から、この新神戸まで、
 走りつづける大型トラックにはどうやら、
 おれの妄念を消し飛ばしてくれるような叙情詩を書くための、
 鉛筆すらもないということが、ちかごろの農家学と、
 占星術師との交わりのなかで、
 判明したらしく、
 ダリのポルノよりもムンクの星月夜が好きなおれは秋霖のない銀河で、
 ジャニスの"Move Over"を踊りながら、かの女とかの女の男友だちについて、
 どうしても考えてしまう悪癖を片づけようと、
 抽斗から電針銃(テーザー)の銃把を磨く。