離別/アラン・マッケル=作

離別/アラン・マッケル=作

   初出『ポエトリー・マーケット』誌 1968年 10月号  

 わたしはアパートの浴室を掃除している
 エディスというなまえに憶えはない
 それでもかの女の名残、そして部分的な懐かしさ
 あるいは去っていったものについての考古学を感じさせる
 舟の軌跡を奪い去っていく未明の波
 この患いを遠ざける、虚構なんてない
 それが事実、どこまでも事実
 
 秋のサンフェルナンド・バレーで女優が殺された
 映画のなかで女優が殺された
 あの女優はかの女にそっくりだった
 ふしだらでも澄み切っていて、
 男たちを気にもとめない
 そして地位もないままに引退した

 アポロ・スリートを進み、
 二番目の酒場に入る
 ニューキャッスルを頼んでしばらく窓を眺めていた
 かの女の話したことをぜんぶ懐いだそうとした
 なにしろ、四年のあいだだったから
 それは骨が折れた
 窓のむこうからだれかが覗き込む
 それはまちがいなく出逢ったときのふたりで
 わたしはおもわず、手をふってしまっていたんだ