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泣きそうな顔で見つめる 西陽にはきみの知らない情景がある
汗の染むシャツの襟ぐり 指でもてなぞるたえまない陽の光りのなかで
きのうとはちがうひとだね きみがまた変身してる九月の終わり
涙顔するはきのうのきみのはず いてもたってもいられぬ孤独
探す指あってひとりの夜長にてキーを叩いて祈るさみしさ
彼方には夕陽落ちる 電柱のかげにかくれたものたちもゐて
救いなんかなかったなんてつぶやいたもうじき朝のときを憾みぬ
炎天の残る九月よみながみなおなじ答えをくりかえす昼
愛するとうそを吐いたね 幾年もかけてわかった鍵の在処よ
季がめぐる 星がめぐって夜たちのうらがわいつもだあれもいない
透き通った葉っぱのような顔たちにかこまれて職場は静か
嘆きとはぼくの渾名か 壁ばかりがこの室には在って
レモン水放つ天使よ焦がれたるものなどもはやなし
祈りさえなくて盥の水寄すわがてのひらの苛立ちなどを
死を願う ことばばかりが空を切る夏の名残りの遠い太陽
ムルソーのようにじぶんを守らない 世界のやさしい無関心あって
ここにゐてだれも知らないような顔して笑うんだあしたのぼくは
だれがまだぼくを憶えてゐるだろう 格子のむこうにばらばらな過去
泥を踏む馬のひずめのようにただうつくしいものが汚れゆく
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