短歌日記30


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 水運ぶ人夫のひとりすれちがう道路改修工事の真午


 からす飛ぶみながちがった顔をして歩道橋にて立ちどまるなり


 アカシアの花のなかにて眠るとき人身事故の報せを聴けり


 夏蜜柑転がしながら暮れを待つ海岸線は終日無人


 もしきみがぼくに呼吸をあわせれば実をつけるだろうゆれる木苺


 手を濡らす澤の流れよ永遠を疑りながら愛をもわかつ


 骨を断つクレーンの機動聴きながらあすあることをいまだ信ぜず


 運ばるるラジオの声よいましがたきみの再誕検閲に遭う


 葦を踏むたしからしさのないなかで高架道路がときを啄む


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