水葬の喇叭の合図おかしみいざないながら骸を放る
天わずか触れる指あり午后はるかひろがるばかり冬のきら星
蝶番喪う夜よ木箱持て歩きさまよう子供たち来る
つづきのない夢のなかにて眠れるをいま醒めてゆくかたわらの犬
ひとがみな憑かれて去りし道半ば老夫のかげと米の汁呑む
天牛の顎が鈍く光りたる正午をあがる階の果て
路地裏に蟹現れる夜あけて光りのなかに鎮座し給う
眼瞑りながらいまだ一騎の夢も見ず頭蓋を多うパーマネント器具の
風充ちるときのすきまを歩みゆくひとりでいることのすがしさ
やまなみの光りあふれるなかをいまクリームソーダが零れだしてる
ことばもて語ることなし初雪のいわれなき罪降るの日の午后よ
やがて緑になる われの地平のものらすべて眠り
色盲の世界の果てにまぎれたるけもののごとききみの祝祭
からっぽの朝のブルース夢がまだ蒲団のなかに潜むくらがり