それらしい紙片

花の過失


 たどり着く花の過失よ恐怖とは過去の国からやって来るもの

 ひるがえる夜のマントよかくれんぼする子供らを連れて去るかな

 シャッター街つづく路次ゆく道わずかふるえてる

 死の祈り黒衣のなかに育まれ、やがてだれかのかげふみ遊び

 労働歌、ブルース、ひとり口遊む 陽のあたる道の窪地で

 恋失う 日陰のひとよふたたびを回転木馬の眸に望む

 

burn

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 回転木馬が燃えあがる華氏はおれのなかに生まれるのにだれもおれを追放しない 飛騨スピードウェイで死んでいったレーサーのために花を奪う技法がまだ精製されていないのが悲しい 高松宮記念で出走した木馬がすべての騎手をなぎ倒し、2.5倍のオッズをつける A-PADの暴走だ 草原がない世界で、迷子になった少年が蒸留ポッドのなかで眠ろうとするあいだ、一人称はきっと戦後詩の夢を見ない

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 片言のスペイン語で立法主義について講釈することになったうれしさで、みじかい人生の花を夢見ることの文法は口語でなければならなかったのに 死に絶えた納屋が燃え、あらゆる品詞が自在性を持ち始める 30万円の希望、またはかたちのない悲鳴とともに、映像化されない小説が嘶く 恐怖は過去からやって来るといったのはだれか それが正体を見せないうちにしけ混んでしまおう、きみよ

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 願いは左、祈りは右 近代を知らない宗派がすべての女を黒塗りにする 税関でとめられた猥褻物のように女たちが隠蔽されたのはアフガンの真夏 悲鳴と苦痛の顔が好きな髭面の男たち たとえば灰になれないひとびとのなかで萌芽する季節 進歩に抗う偶像破壊と、その重婚のなかでしか生きられない男たちのためにいま、刃を

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 ソルフュージュが上達しない馬がいる テープカットに出遅れた女がひとり皿を洗っているレンタルビデオの駐車場 夜が星になり、昼が太陽になる時間 地図が国家になり、子供が生まれる 褐色の肌を嘗めたいといった男が月曜日に復活するというのに、いつまでもいつまでも声は固有を拒み、詩は伝説になれない
ハイウェイの最終出口でいきり立った神がIMEの不具合とともに本日休演のコラールを読みあげる

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a super market


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 臆病な犬だ たかが楡の木が発狂したからといって怯えている 真夏の死、あるいは蟻塚の穴 ビニールの服を着たレジ係が品物を会計する おれの手が、おれの足が、分裂しながら撮影される バーコードを失ったかげが、きょうはやけにさわがしい ハンマーと鏝、ならずものの国で派生した雪はプールをいっぱいにする かたわれにはだれもいなかった 長距離バスが標的にされ、ぼくの座席が爆破される 気の狂った車掌が料金所で驟雨する ここにはもうだれもいない

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 教会で発見された大麻樹脂にはヨブ記がつまっていた 主犯は主教で、児童虐待の容疑で訴追されている 長い夏だった タリバンが暴発する日記 エリカちゃんがミキちゃんと一緒に亡命したから、きょうは記念日 発泡酒の泡と、うたかたの日々が偽装結婚した窓口で、エリカちゃんはずっとガムを噛んでいる どうして花が喋らないのかを卒業論文に撰んだ学生が、ブルカのなかに閉じ込められてしまったのに、報道官は記者質問に答えず、ピンボールの練習をしていた

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 神はレンタルサーバーが使えない 決済をするカードがないからだと先生がいった 神は信者の名義貸しを待っている 千年間も待っている 髭と穢れの関係性、帽子と禿の共犯性、それぞれの決断のなかで、顔が失われるとき、アラブ人のナイフが大学教授を刺し殺す 純粋な殺人の美学 チャンドラーの読み過ぎで、熱をだした羊が夢のなかで人間になるころ、神はしかたなく信者のカードを強奪した

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 だらしないおれだ 空気銃を撃つアルピニストの群れが、一瞬稲妻する 感染妄想に侵されたテレビが、政治家と交尾し始める夕べ 1979、1979と繰り返し、勃起した僧と、うら若いサイドカーが合体し、夜の報道スペースを埋め尽くす勢いで侵攻し、たえまないピストン運動とともに走る 建物の構造上、鉄筋を追加する必要があるとして、おれの歴史に公共工事が行われる予定だ

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the smart brain dancing in 3rd floor

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 収奪の時間です 雨が降りつづける夏の一週間 東から西へ 流れものの群れが会釈をする 抵抗はいけません 先週末の小説が1975年に映画化されたために、多くのひとびとが圧政に屈するのが正しいとおもっているんですか? 雨がやまない夏の一週間 だれもいなくなった闘技場で、牛を待つ男はマントのなかに冷蔵庫を匿っていますから気をつけてください レインコートの綴りがわからなくなった午後 魂しいのゆくえをレコード化している役人と、コークをやりにいくのも、もう終わりだ

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 投げたビール壜が飛翔体に変わる 朝鮮半島に群生する朝顔が、おれの室に突入する 伊香保の水、かぎりないからだ 祖国のないからだが、シビレエイと婚約をする海 水は唯一の解答 それがなかったら、いまごろ、牛にまたがって1990年代のビデオテープで記録するだろう 星の隠語が町を壊滅する コーランが暗記され、パンチカードに読み取られ、AIのつくりだした神が豚小屋で交尾している

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 肉欲の色彩がまぶしい 電子オルガンが破壊され、群衆が配給にならぶ おそらく補正予算が組みしだかれ、財政出動が阻まれる 官僚の笑いが、交流電子のなかで弾けるのをテレビは無批判に垂れ流す 空飛ぶサーカス 逃げ場のない国で、釘を打つ父たちが、やがて夜霧に消えるのをおれは批判的な眼差しのなかで、眺めているだけだった

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