俳句

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春を皆兎唇のごとき少女らは 密会のまぼろしばかり葉の桜 花ぐもり羞ぢを生きてか夜露落つ 蝶番はずれて訪ふ夜の雨 ゆふれいの足美しき裏階段 鋪道満つしずくやひとの群れみせて 裏口に歌声低くdoorsは ソーダーの壜よりあはれ群れなぞの 鉄路踏みをんなひと…

初秋のスケッチ

初秋にて現るる死人ひとりのみ 秋暮れる雲間にピアノ聴ける使者 月蝕や喪われゆく未亡人 秋霖の烈しき真昼水を呑む 水にふくれる陽光もやがて秋 火事遠き果肉のごとき匂いして さすらえるもののみこそ秋の月 犀を飼うわが幻想よ竹の色 瘋癲の死す秋ありぬ保…

ドン・コサックの諧謔曲

忌中なりドン・コサックの子守唄 欠伸して入海自死を試みぬ 投宿の仄暗きなか横たわる 遊技場の電飾残る輝きや 電柱のかげまぼぼろしやまほろばか 曇天の雲路の果てを呑み尽くす 憐れみのなき隣人の電子ピアノ 電気ギター炎上するに音烈し 枳の花の匂いに惑…

鴎の画

狐火に降る雨寒夜男来ぬ 飛びかたはなめらかならず鴎の画 画のうちの木工ひとり休息なし 古本と少女はひとつ過ぐ冬の 初冬の男たずさう表紙絵は時化て 灯火のいろいろのみか画面の都市 凪失わば飛ぶそらあらず一羽の青年 飛ぶそらもあらず精神病棟の冬 おも…