Other Voices

 春を皆兎唇のごとき少女らは
 
 密会のまぼろしばかり葉の桜
 
 花ぐもり羞ぢを生きてか夜露落つ
 
 蝶番はずれて訪ふ夜の雨
 
 ゆふれいの足美しき裏階段
 
 鋪道満つしずくやひとの群れみせて
 
 裏口に歌声低くdoorsは
 
 ソーダーの壜よりあはれ群れなぞの
 
 鉄路踏みをんなひとりの春は雨
 
 墓のごと背見せて歩く男かな
 
 テレビらの眠れる路上湿度高
 
 花冷へやあしうら白き日暮来て
 
 みどりごの悲しみやまず青電車  
 
 ねがへりのたびに眼ざめる機械かな
 
 サーカスの灯火とともにわれも消ゆ
 
 透きとほり朝露まれる乳房欲し
 
 猫の尾をふめば煙の夜来たり
 
 人影のにせものばかり高煙突
 
 かのひとの声のかりそめ日傘過ぎ