父方の祖父と会ったのは3度だけ
いちばんめは産まれてすぐ
つぎは小学生
そしておしまいは20歳の夏
かれは酒乱だった
わたしも酔って父を撲りつけ
父はいったもの──おれの親父にそっくりだ!
夜のハイウェイを山奥へといき
さみしい田舎にきた
なにもないところで朝を迎えた
祖父の死体は暑さからか
大口をひらき
薄目をあけていたっけ
わたしはロートレアモンとニーチェを読み
眼のまえで女の子の絵がでかでかと載ったライトノヴェルを読むで
しかし、それだっていまにすればどんぐりの背較べだ
どちらにしたって誉められたものじゃない
──息子さん、よく本を読むのね、うちのも読書が好きで。
伯母がいって母が返した
──ええ、じぶんでも書いてるんです。
わたしの書いたものに母が興味を示したことなど1度もなかった
やがて出棺のときがきた
祖父の製材所はもうなくなってて
かれの後妻は人形みたいにうごかず
なにも話さない
表情もなく
パイプ椅子に坐ってた
祖父は昔し祖母を追いだした
わたしが9つのときにかの女は死んだ
葬式で泣いたのはあれがはじめてでおしまい
腹違いの伯父がきれいな妻と
そろいの服を着たふたりの娘とともにいた
われわれのなかでいちばん清潔で幸福そうにみえた
昔しかれにもらったプラモデルをおもいだし
それからまたうつくしいかれの妻をみた
店の1軒もない通りを歩き
やがて燃え尽きる祖父の
終の烟をコンクリートの長椅子から眺めた
ひとりだけ煙突のみえるそとにいたんだ
烟が午のなかに失せていくにまかせて
犯罪小説をわたしは考えながら
蓮の花托をみた
無数の眼が
わたしをみてた
夜になってまたもハイウェイを走った
父と母たちは悶着をやりあい
べつの道をいった
途上、コンビニエンス・ストアに寄った
コーヒーを買ってでていこうとしたとき、
わたしはいった──
またも車に乗って
父の憤慨に身をまかせた
母と姉妹がどうなったのかは知らない
ただわたしはカミングスが好きでもきらいでもなかった。