2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧

裏口

その戸口はだれも望まない なにも待ってやしない 閉じて 閉じられてしあわせ 草も花もない鉢と 水でいっぱいのペットボトル 通り過ぎるものはみなかつて生きたもののみ そのなかにあってまだ生きてる ウルフの歌声をおもいながら 遠のいてくその裏口へと つ…

空域

飛ぶものを落とすとき わたしははじめての羽を得るだろう 肉屋の女がふりあげるものがしっかりと筋を断つ 忘れたいものが忘れられず 憶えてたいものが薄れてしまう わたしはただ飛ぶしかなかったんだ あのとき きみの手が石を掴んで しっかとこちらをみてた …

埋葬

for t すでにためらうことはおろか 容赦もかなわない 枯れた花が欲しい そいつを抱いて飛びこめる場所があればいい すべてがおれを赦しても 自身ではそうにもできない うごかしがたいものにかこまれ すっかり鉤吊りにされてしまった かつては走ることもでき…

死んだ馬にまたがって

かぜに なぶられ 路上 にすりきれ 立ちあがることも できず おもいだすのは舞台のうえのきみ ほかの客たちは きっと ひやかしに ちがいない でも ぼくはいつまでもいたかった かぜは きりきざむ 新聞記事を なんでこうなってしまうのか なにもわからずに で…

襟がゆれてる。

for Hideki Yoshimura from "bloodthirsty butchers" 襟を掴みながら手も足もそして顔も 凍傷になりかけてた おなじ道をいきつ戻りつ たぶん躰を温めようとしたんだとおもう 公園のベンチにたどり着くと ヘルメットをしたまんま横になった しばらくすると関…

あるとき閂が砕け そこがひらけてしまったから しかたなく母屋からでてみれば 納屋が陽のうちで眠り 燃えながら建つ 光りは13秒の間隔で 眼を撃ち 影を走らせ 土壁を這っているいっぽんの樫へと寄り添う それでもふいに暗くなる納屋のまえ 凭れかかる箒が呼…

運転手求ム

25番めの、 晩夏 浮浪者収容所より追い放たれたぼくは軽四へ載りこみ ほかの3人とともにしてどやの群れをぬけた 中部はどこか──どこだっていいところへと運ばれる なじみとなった失意の手たち 足たちとともに降りれば こわおもての男らだ やつらはぼくらに…

JRA

老夫どもは敗れもののおだをあげて去った おれには賭すものがない わるいが競馬をやらないんだ おまけに知りもしない 6月──第2番めの土曜日 午后5時29分と3ハロン 降らしぞこないの曇天も失われ 現れてくるのはいっぴきの孤立者 とてもおれにそっくりだ…

e・e・カミングス

父方の祖父と会ったのは3度だけ いちばんめは産まれてすぐ つぎは小学生 そしておしまいは20歳の夏 かれは酒乱だった わたしも酔って父を撲りつけ 父はいったもの──おれの親父にそっくりだ! 夜のハイウェイを山奥へといき さみしい田舎にきた なにもないと…

失踪人

どうしてだれもドアをあけないのだろうかとおもう ひなびたアパートメントで寝てるのは? あるとき 音があった 睡りから醒め 窓が薄緑になってるとき おもてはいつも静かだ 愉しみでいっぱいというのにどうしておれは噤むのか 歩くひとびとは搾りたての乳の…

日がながくなりつつある おれの足に生えた影のさきっちょ 知らない男らが倉庫のあたりで ゲームをしてた 港がすぐそこまで近づき 聞きとれない声でなにごとかをいってて やがて遊びつかれたかっこうの男らは作業着に抱かれて そのなかへ飛びこんでった たく…