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われのみがひととはぐれて歩きだす初夏の光りの匂いのなかで
ものがみな譬えのように動きだす暗喩溶けだす午前三時よ
それまでがうそのようだとかの女がいうわれら互いに疑りながら
つぎの人生あればたぶんきみを知らずに埋もれていたい
うそばっかりで終わってしまう手紙よ燃えあぐる森林の彼方
手に触れる温度のようにやわらかくそして悲しい現象学よ
モスコミュールへミントを添えるわずかに濡れた指先の痕
初夏の狐のように反抗の眼をしてやまずわれらの欺瞞
ひらかれし夏への扉 たとえれば洗濯台に忘れた剃刀
れもん色の車が走る なまぐさき鰤を一匹連れ去りながら
バス停の女生徒ひとりふりかえる鳥の一羽がわれには見えず
晩年をきみに与うるつかのまの陽射しのなかに棄てた季節よ
声がまた聞えない 衛星電波も孤立する夜
乾く水の痕を歩いてゆくもはや寂しいともおもわぬ
たが夢も肥満のごとく膨れたりやがて萎んでしまう朝どき
水に病める子供ばかりの風景を愛しながらもひとりは去りき
すがるものなくてひとりの昼餉する冷めきった鮭の桃色
やがてすべての悔しみを水樽に葬りたしとおもう夜
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