2024-03-08 赤い柄の鋏 詩 はずんだ綿パンの臀が木の向こうに沈んでいく 赤い柄の鋏をもって姉は花狩り 嵐の翌日に万物はゆるみきって ところどころ溶けている 濡れているものはどれもこれもイヤラシイ 妹たちは犬の散歩に頑としていこうとしない そのいっぽうで遭難者たちは 夕までにみな帰る 濡れていたものは乾き 狸は庭から引き揚げ 鳥は廃ダムの巣にもどって ただひとり狡猾なおれが昇りたての月をもぎ取っていく 鋏をもって姉は目下、行方不明