無題

 

 この道程をふりかかる雨だとか雪だとか光りだとか
 そんなものを期待して生きることに疲れてしまった
 大勢のひとびと、時計をなくしてしまった子供たち
 あるいは帽子を失った晩年のおれたちの顔と顔たち
 
 あらゆる形式のなかで、
 もっとも野蛮なものを求めて歩く
 やがて花野を死地に変えようが
 どうだっていいと

 恥に塗れた手のなかで
 やがて梨の木が育つ
 おれはもう憎しみも捨てて
 この場所からきみに問う

 その手はひらかれているのか
 その眼はひらかれているのか
 その唇は求めているのか
 そしてその体は偽っているのか

 この過程をふりかかる夢だとか愛だとか祈りだとか
 そんなものを期待して生きることに疲れてしまった
 大勢のひとびと、時計をなくしてしまった大人たち
 あるいは背景を失った晩年のきみたちの顔と顔たち