たとえば夢が



 たとえば夢が足にからみつく整形外科の窓まで
 跳びあがるくらいの勢いでおれは此処にやって来た
 緑色の玻璃が砕け散った場所までやって来た
 すべてがそれらしいだけのつくりもの
 すべてがうわべだけの世界から
 あなたの心臓を突き抜け
 やはりだれもおれを理解しないという点で
 なし崩しの和解を交わした
 真昼の月が眩しすぎるからというだけの理由で扼殺された男
 かれの亡霊とともにひとびとが駅を急ぐなか
 たったひとつきりのあこがれを喪った
 いまだにその疵が癒えないのはぜんぶあなたのせいだ
 だからおれは水鉄砲で武装して病院の物干しを跳躍するんだ
 いつだったか、あなたがおれを指して嗤ったことやなんか、
 古い屈辱のなかでなにもかもとおまんこする
 それが空想でないとだれがいえるだろうか
 それが感傷でしかないとだれがいえるだろうか
 おれはおれのなかに侵入する
 おれのなかのいっぱいの他人を犯すために
 ちがった顔がまたこちらをふり返る
 それがあなたではないというだけで射殺した
 あれもこれもすべてはあなたのため
 おれはあなたのなかの奴隷のひとりでしかない
 ただおれの季節がプラモデルとして販売される夜ならば、
 こんなに入り交じった感情を剥きだしにすることはないのに
 いまは夢のなかに存って気分が少しおかしいんだ
 いずれにせよ、主題はすべてあなた自身で、
 おれはあなたに操られるがままの人形に過ぎないということが
 鑑識からあげられたんだよ。