深夜、たったひとりでイアン・
朝になって苦情の電話が管理会社からかかりやがった
バリトンで吼えながら、「残虐博覧会」はまずかったんだ
せめて「死せる魂」にするべきだった
イアンを身ぶり、手ぶりするのは危ないことだ
もっと突っ込んでいってしまえばキ印だった
おれはきれいに、きれいに死にたい
淫欲時代を懐かしみながら、
最後の盃を慈しむ
そんな光景をおもいながら、それでも死ねないでいる
スコットランド・ヤードに追跡されるという妄執とともに
21世紀を闊歩しているのは正気の沙汰じゃないぜ
三幕一体の作劇に尿を放ち、
サム・シェパードの戯曲を読む
黄金の緑が解けだした画面で、
さっきはひとりの女が投身自殺したけれど、
おれは生憎高所恐怖症だから、
薬を嚥むだろうな
そしてガスをひねる
女は伝説の譬喩ならば、
男は寓話の譬喩だろうか
疑問符と感嘆符をとりちがえ、
人生を再建できないペソアの同胞たちと、
ヴィクトリア幻想を学ぶしかないんだ
首を吊ったイアンと憐れさのなかでまだ生きているおれとの
回路が見当たらない駅の券売機で、
地獄への切符を握りながら、
ルンペンの男をいま観察している、
きみはそれを懐い描いて、
そっと笑ってくれよ
そっと笑うんだ。