かつてのひところはたのしかったものだ
いまだっておそらく
やまなすびや
けむりきのこが
わたしのともだちに
ちがいない
あるいはやっては来ないみどりのからすのようなもの
いなくなったのはわたしのほうだ
どの路次をかよっていようが
はらからもなく
はらわただけが温い
ただれるようなうめきのうち
そこに起ってるしかないのだ
あこがれてたいずれも手にできない
たやすい職すらもたやすくかたづけられて
夢のうちっかわでけたたましい自動車どもが身を這うのを聴く
それはかつてすばらしかったはずのもののために奏でられる弔い唄
つまるところなにも起こりはしない
つかみとることやだきしめるなにもなく
ただ窓からみえるのはかがやかしい宿たち
Hotel TOM BOY や Hotel juke box そしてHOTEL QUEEN
それらの燈しだけがほんものの、光りだ
だがわたしの手にできるのは38wの電球
そいつはたなぞこにあって光りを失ってる
昏くなっていくちいさい室で
そいつを握りしめ
そいつが
ばちん
とくだけるまえに戸棚のなかへ、そっとしまった
こいつはいったいなんなんだ?