冷房装置

 


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 ためらいの兆しもなくて口噤む 炎のようなひとの作業着

 

 いくつかに書きためてゆくおもいでもあり 鶏頭も青ばむ

 

 手習いの文字かすむ雲がある 遠ざかる景色のなかで

 

 まるでひとに甘えるようなわれをりぬ 羞しいまでのしぐさ

 

 きみのいう決まりごとなんかいらない 夏まっしぐらの土嚢

 

 なにがなくてそらす眦ふかく見る 都市計画に零れた土地よ

 

 祭神のゐない道にて通りゆく祭囃子のなかのきみが淋しい

 

 さんずいをかかぐ正午の世界にて踊りだしたり子持ちのシシャモ

 

 ゆく夏の冷房装置 悪夢とは二重露光の自我との対峙

 

 すずかぜに乗せるおもいもなくなってモスリン詩集荒野に置きぬ

 

 地獄にて警備員採用す 履歴書に没年を書きぬ

 

 制服を汚す 日雇い人夫たち からっぽの箱に南瓜入れる

 

 カゴ台車ゆく出庫場 だれかが叫ぶ番号は7の26!

 

 同期せしビートマシンが呼んでゐる信仰のない男の望み

 

 陽の照りしマネキンたちの微笑つづく田園都市

 

 警告表示現れる一閃のモニターいつもより生温い昼餉

 

 たそがれにまぐそのような匂い発つちまたの夢 

 
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