短歌日記11


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 ものがみな荒野の譬え 亡霊の数え歌のみわれに聞ゆ


 姿なき星の戦慄 臨終のひとのまぶちに落ちろ 落ちろ


 転生の寂しき初夏よかげの濃い子供のひとり丘へ駈け入る


 教会の裏手でひとり酒を呑む正午の鐘のゆすぶるなかで


 しりとりの鳥の一羽を逃したる直角の空を睨むひとかな

 
 土地の神燃ゆる週末ぼくたちが犯した罪に裁きがなくて


 涜神を独身といい換えて去りし中年の肉欲むなしく涸れる


 夏至近き汎神論のたそがれが眠るわが身をふるわす三時


 だれかだれか神学のかげりを教え給えフリーウェイの男


 胸厚き青年われを超越す もはや肉体のみに淫することもなく


 夢がまだ仮説に過ぎぬ夜を見たなんだか熱いぼくのふくらはぎ

 
 海岸をうしろむきに牛歩むやがて来る屠殺へのむなしき抗い


 手に掴む麦の秋かなぬばたまの村の暗黒祭りの準備
 

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