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ことばなき骸の帰還御旗ふる男の腕がわずかに震るる
もしやまだ花が咲いては切られゆくこの悔しみになまえを与う
水温む五月のみどり手配師がわれを慰む花もどきかな
真夜中の歯痛のなかで懐いだす星の彼方のささやきなどを
呼び声のなきままひとり残されて葱を切るのみ黄昏のビギン
アカシアの雨が洗って去ってゆく不在のなかの花々たちを
霊媒もあらずや燕 亡き父の骨壺ひとつふと見失う
夫にも父にもなれず雨季を待つひと恋うるときも過ぎて
アル中の真昼の頭蓋涸れてゆく預金残高はなし
この夜のほとりに立ってかりそめのぼくが鳥となって飛ぶころ
陽ざかりの産着がゆれるベランダを見あぐる 偶然の失意
愛を 愛を ただ代えがたいものが欲し 月の象形
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