atomics season

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 飛行士の黄昏をかき分けて、青果物を売りにゆくのがぼくの弟です 鞄がゆれる 靴が跳ねる 時計職人になれなかった弟ですから 厚揚げにオクラを刺して遊ぶのはやめなさい どうか、ペパーミント・チョコレートをぼくにくだざい 寄る辺を求め、天才にも負けないやさしさで 主題歌を歌うのをどうか、赦して欲しい それは午後の日差しのなかで、ゆっくりと明滅するハザードランプの光りだ だから、そのレコードを レコードを寄越せ

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 交じり合いながら、互いのことをなにも知らないと気づく 果実が発酵する木のうえの謀略 天地を失い、道に戸惑った顔がかわいいからといって、きみの友だちにはなれない 心臓のなかを泳ぐ報道官の怒り ウイグルは死んだ、香港は扼殺された 次は台湾だ、尖閣だ、そして沖縄だ 季節の料理が並べられ、抵抗を失った美食家たちが天掟を失って乱れてゆくのをいまは見ている

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 原子を乱射する 庭を色どる草花が涼しいオープン・セットで、きみが編輯された位置がまだよくわからない だからおれはだれの友だちにもなれない 文語のなかで太陽が沈む 白川静が圧し掛かる 重力だ きっと高速道路の料金所で支払った人体が 夜の模型と、接続されて助詞のなかから、おれを狙っていた

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 デ・レーウのピアノが逆回転する朝 訪れた男がきみでなかったという理由だけで解雇される 生殖に失敗した赤いダウンパーカーがかれの代理として、支店長に抜擢された なにしろ、膚がざらめく砂地のうえで、だれかが脱いだシャツをおれは改修するんだから 時としてプリペアドされた金利が暴騰し、やがて仮面の紳士とともに日展で受賞する

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 きっとおまえだったんだろう 例のプールで水中クンバカに挑むのは 意味論を数え、ポンティに瞑目し、長距離バスにゆられる 革命幻想に踊り、クリミア併合を賛美する瘋癲病院の首相たち レッドチームに憬れる無邪気さはきっと週末のカフェで機銃掃射に遭ってしまえばいいのさ 

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サティ:3つのジムノペディ

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